たけねこ

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たけねこ

 うちの裏庭には、ねこが生えます。  ニャーニャーと鳴くねこが、地面から生えてくるのです。  竹藪のなかでタケノコのように生えるので、わたしは“たけねこ”と呼んでいます。  たけねこは知らないうちに生えてきます。  わたしの気づかないうちに、こっそりと生えてきます。  生えるとニャーニャーとうるさいので、生えたことがわかるのです。  ねこはそうやって生えてくるものだと思っていました。  町で散歩しているねこは、そうやって生えてくると思っていたのです。  わたしはそれが普通だと、ずっと思っていました。  だって、お母さんがそう教えてくれたからです。 「猫はね、地面から生えてくるものなのよ」  お母さんが言いました。 「モグラさんと一緒?」 「そうよ。ヒメはお利口さんね」  お母さんが優しい笑顔で答えました。  とても優しいお母さんです。  わたしはお母さんが大好き。 「お母さんもヒメが大好きよ」  そう聞くだけで、幸せイッパイです。  わたしはお母さんと二人で暮らしています。  だって、うちにはお父さんがいないからです。  わたしが小さいときに、お父さんは死にました。  お父さんが死んだときのことは、今でも憶えています。 「えーん、えーん」  わたしは泣きながら、お父さんのそばにいました。 「苦しい、苦しい」  お父さんが苦しそうに呻きます。  わたしの泣き声を聞いて、よけいに呻き声をもらしていました。
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