エナジードリンクですか?いいえ、エナジードレインです。

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連れてこられたのは、まあなんというかハリー◯ッターにでも出てきそうな感じの書庫だった。円筒状の空間のその壁にごく僅かな隙間も許さないとばかりに詰められた書物の数々。勿論内部にもたくさんの本棚が据えられている。その全てが木製で木目も驚くほど統一されており、幻想的な雰囲気を演出していた。 これ何冊あるんだろうか……。 そんな俺の疑問を知ってか知らずか、アンネゲルドさんは言った。 「およそ十万冊と聞き及んでいますが正確な数は私にも……」 「じゅっ……!?」 どこの腹ペコシスターだそりゃ。目的の指南書を探すのにも一苦労どころか骨が折れる。 「これ、どうやって探すんですか……」 「大丈夫ですよ、タケル君。司書の資格があれば、この書庫の蔵書全てを好きなようにソートできます」 ソート?並べ替えるのか? 「――キャストオン、整序(ソート)、難易度順に」 次の瞬間、十万冊の魔導書が本棚から独りでに飛び出し、空間内を飛び回る。バッサバッサと荒っぽい音が聞こえてくるが本同士がぶつかるようなことはないらしく、全ての本が定位置に辿り着いたら一斉に本棚へと戻っていく。 す、凄え……。 「さて、お眼鏡にかないそうなものを見繕いにいきましょうか」 何てことないかのようにさくさく歩き出すアンネゲルドさんも凄え。実際何てことないのだろうな。 「他にも検索(サーチ)なんて魔法もありますが、やはり自分で手にとって見る、というのが醍醐味というものでしょう?」 「それは確かに」 自分の直感を頼りに、数多ある教本の中から自分に一番合っているものを探す。日本にいた頃は、図書館に行ってはよくそうしたものだ。 「偉い人にはそれが分からないのです」 「何故そのネタを知っている」 敬語も忘れてツッコんでしまった。いや不可抗力だ。 実は俺たちの他にも日本からいらっしゃった勇者様とやらがいるのではないか。 「というわけでどうぞ、ご存分に」 ソートの魔法で難易度順には並べられているはず。多分、手前が易しい類の魔導書だろう。 本棚を適当に眺めていく。その中でパッと目を引いたのが、背表紙に書かれていた『魔法学基礎論』の文字。 中身をパラ読みするとどうやら、そもそも魔法とは何であるかとか魔力とは何であるかとか根本的な定義と概念が、その検証方法とともに記載されていた。とことん理詰めっぽいな。まあ数学や理科は好きだし、ありかも。
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