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とりあえずここは冗談を言って誤魔化そう、そうしよう。
「あ、じゃあ、アンネゲルドさんも行きます?――なんちゃ」
って。と続くはずの言葉は、アンネゲルドさんのそれに阻まれた。
「私でよければ是非!」
何で食いついた。いや、あなた王国のお抱え魔法使いみたいなものでしょ。おいそれと抜け出していいものなのか。
とはさすがに諫言できず、他の当たり障りのない言葉で濁す。
「えっと、さすがに家族の方とか困るのでは……」
「両親は放任主義なので大丈夫です!」
「恋人や婚約者とか……」
「生まれてこの方(都合によりお見せすることができませんご了承ください)……」
やっべ地雷踏んだ。ちょ、嘘でしょ、この見た目で?年だって見た目相応なら適齢期だろうし、いてもおかしくないと思ったのだが……どこの天然記念物だろうか。
俺も焦りからか、更に地雷を踏み抜いてしまう。
「アンネゲルドさんって今お幾つ……」
「……です」
「えっ」
「22と言ったんです!どうせ私は仕事が恋人の行き遅れですよ!」
めっちゃ怒られましたハイ。冷静じゃなかったとはいえ、女性に年齢の話なんかするもんじゃないよな、うん。……いや待って、22?22歳だよな?そんな遅いのか、それって。
「あの、俺たちの世界だと結構30歳でもまだの人とかいるし、気にしなくても……」
「年下の男の子に慰められました死にたい」
どうしろってんだ。もうキャラがブレまくりだよこの人。濃ゆいなあ。
俺はしばらくの間、書庫の床で蹲って泣き言を漏らすアンネゲルドさんをひたすら宥めすかしていたのだった。
「先程は見苦しい姿をお見せしました、申し訳ありません……」
やっとこさ立ち直ったアンネゲルドさんの口から出てきたのは謝罪の言葉だった。
「いえ、そんなことは!失礼な言い方ですが、アンネゲルドさんが面白い人だって分かって親近感を覚えました!」
「親近感……?」
「えっと、はい。親近感です」
なにかマズかっただろうか。やはり子供に親近感がとか言われるのは癇に障っただろうか。
「では親近感ついでに……こほん、私のことはアンナとお呼びください。親しい人はみなそう呼びます。私もタケルと呼びますから」
一つ咳き込むと、アンネゲルドさんはそんな魅力的な提案をしてきた。断る道理はないし、こちらからお願いしたいくらいだ。わーい異世界最高。ひゃっほう。
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