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普通じゃねえですちょっとは落ち着いてください。なんて言っても聞かないんだろうなあ。と、経験則からもう半分以上諦めていた。
にしても、ツインテミニスカ黒ニーソといういかにもな妹キャラの早苗とポニテ巨乳安産型といういかにもな幼馴染キャラの香織が並ぶと、なんだかとっても絵になる。いやだからこそ嫉妬で俺は学校に居場所がないのだが。
「香織もわざわざ俺に構うなよ。おかげで孤立してんだぞ。もうちょい他の奴らとつるんできたらどうなんだ」
と、罪悪感を煽るようなことを言えば、
「だって健を独り占めしたいじゃない」
あっけらかんとそんな答えが返ってくる。悪びれるでなく、純粋に。
「お前それ本気で言ってんならマジに魔性だな」
立派に悪女である。女子高生のクセに末恐ろしいな。
「あらやだ私って魔性?」
「科を作っても無駄だからな、色気はねえぞ」
健康的……というか健全にエロいとはどうにも言えそうもない。
「ひっどーい!そんなこと言うともっと孤立させてやるんだからねっ!」
それはやめて。
とまあ、そんな身のない話でも数を重ねれば登校時の暇なんかは潰せてしまうわけで。
昇降口をくぐり、下駄箱で靴を履き替え、教室の引き戸を開ける。ここまで香織は一緒である。クラスメイトと適当な挨拶を交わして、指定された机に座る。窓際でもなければ一番うしろの大魔……後ろの列でもない、なんら特等席でない場所。
特にすることもないので――香織はやってない宿題があったのが発覚したらしく慌てているが――突っ伏して時間を過ごす。香織が何か言ってるがまあ無視でいいだろう。
「ちょ、健宿題手伝って!ねえ、お願いってば!」
まあ無視でいいだろう。自業自得である。それに、俺でなくとも手伝ってくれる奴は文字通り山ほどいる。
香織のお願いとやらが俺に断られたと分かるや否や、周りの男子がここぞとばかりに「俺が手伝おうか?」「いや僕が」などと騒ぎ立てる。一瞬オタサーの姫とかいう単語が浮かんだような気がしたが、そもそもオタサーのオタに美少女の宿題を自主的に手伝おうとする気概がある気がしなかったのでやっぱり気のせいである。
そして大本命はあいつだ。
「香織?宿題忘れたのかい?」
「あ、龍造寺君」
テナートーンの切れる声。もはや顔など見る気も起きないがイケメンである。
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