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容姿端麗、文武両道に会社の御曹司という圧倒的ハイスペックでこの学校のヒエラルキーのトップに君臨するリアルチートキャラ、りゅーぞーじくん。下の名前は忘れた。忘れたったら忘れた。
どういうわけかこのりゅーぞーじくん、香織にぞっこん(死語)らしい。まあ少なくとも香織も美少女であることには違いないし、天真爛漫で物怖じしないその性格はやっぱり男子受けがいいのだろう。身体つきもエロいしな!……おっとつい熱が。
コツコツと数人が去っていく靴音がするので、多分香織はりゅーぞーじくんに任せることにしたのだろう。
そうして幾らか経った頃、何度目かの戸を引く音が聞こえ、ついで可愛らしい声が教室に響いた。
「はーい皆さんおはようございまーす」
我らが担任、春日四季(かすが・しき)先生である。確か三、四年目だかで今年初めて担任をもったらしい。つまり四季先生の初めては俺(たち)というわけだな、素晴らしい。
「欠席はいませんね……ほら、健君起きてください」
先生に言われてしまっては仕方ない、上体を起こす。
視覚はぼんやりしており、鼻も触覚もあまり利かない。だから、というわけではないだろうが、とりわけこの場に似つかない単語が聞こえた気がした。
――キャストオン。
キャスト……オン?詠唱展開、とか、だろうか。誰だよこんな場で厨二発動してる奴。せめて放課後まで隠しやがれ。と、周りも見渡すも、そんな輩はどうやらいないようである。幻聴だったのだろうか、だとしたらヤバ過ぎである。俺はもうとっくに卒業した身だというのに、ウッ……右目が疼……かねえよ。ホントだよ。
だが、次に聞こえてきたのは、やけにはっきりした女の人の声で――
――召喚(サモン)!
呼応するように出現した、金色に輝く巨大な魔法陣。その大きさは教室一杯にも及ぶ。さすがにこれが異常事態だと把握したのかクラスメイトはパニックを起こす。だがそれも数瞬、この世界から、俺たちの存在は消え去った。
とまあそんなわけで、どうやらこの教室にいた人全員が異世界へ召喚されたらしいです。マジか。
「ようこそお出でくださいました勇者様方!」
やたら上機嫌な声で話しかけてくるのはムサいおっさんだ。その声を聞き、ようやく意識が覚醒する。どうやら他のクラスメイトも概ねそんな感じらしく、目の前のおっさんなど気にも留めずに辺りをキョロキョロ見回している。ここどこやねん。
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