エナジードリンクですか?いいえ、エナジードレインです。

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ついちゃいけない方の核心ですよ。これ帰れないってなったらみんなの士気ダダ下がりやで。おっといけない動揺し過ぎてつい関西弁が。 「……それは、保証しかねる」 苦虫を噛み潰したような表情でおっさんは言った。ないわけではないのか。伝承程度の存在だったら笑うしかないが。 「帰れないとか冗談じゃねえ!」「嘘でしょ……そんな……」「嫌っ!嫌ぁっ!」「マンマミーア」「ちょ待てよ」「こんなところになんていられないわ!もういい私一人で過ごすから!」 望み薄だってことが分かったのか、周りからは批難の声が上がる。正確には、批難、悲嘆、狂騒か。なんか違うのが若干名いるようだが。実は冷静だろお前ら。 さすがのりゅーぞーじくんも怪訝そうな目を解くことはできないようだ。 仕方ない、ここは現状復帰に努めよう。おっさんを見据えて――いやちょっと視界の端っこに映して、俺は口を開いた。だって直視したくねえもん。 「つまりこういうことですか。何の罪も関係もない人たちを拉致した挙句、帰す素振りはなく、そのまま野たれ死ぬか自分たちの言うことを聞くかどちらか選べと強要していると」 ぐっと、おっさんとお姫様の顔が罪悪感で一杯になる。よしひとまず第一段階は大丈夫である。 「おい田井中(たいなか)、そんな言い方はないだろ。この人たちだって酔狂でやったわけじゃないはずだ」 第二段階も大丈夫そうだ。やっぱりりゅーぞーじくんはこういう役目でなくちゃ。 「うるさい黙ってて。で、さすがに何の見返り、待遇もなく、なんて冷たいことは言いませんよね?」 待遇、と言ったのは野たれ死ぬ可能性を潰すためである。言うことを聞かない奴は国外追放……なんてないと思いたいが念には念を、というやつである。 「も、勿論だとも。行く行かないに限らず、生活の保証はしよう。安心してくれ」 「いや生活の保証って。こっちは元の生活を潰されてるんですよ?攫っておいて更に軟禁ですか?」 「わ、分かった!国内……い、いや、国外でも可能な限り便宜を図ろう!それでどうだ!?」 ふむ、この辺りが落とし所だろうか。もう少し攻めてもよかったが、見限られてライフラインを確保できなくなるよりはマシか。 「……そうですね、それならいいと思います――だってさ、聞いたかみんな。贅沢し放題だそうだ」 「ぜ、贅たっ……!?」 おっさんが目を見開いて悲鳴を上げるが喧騒に相殺される。
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