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この状況で一番マズイのはこちら側が相手に対してマイナス感情を持つことだ。なんせ何かしようにも不信感に苛まれては動けないからな。無論これは双方向に言えることだが、今回に限っては相手の罪悪感を煽ることでそっちは払拭できる。これが第一段階。
更に言えば誰かが窓口となって相手側をフォローすることで罪悪感を軽減するとともにこちら側へある程度の好意を向けさせる。悪というのはそれだけでそれ個人で悪目立ちするが、善が目立てば周りの人間も善だろうという心理がはたらくためだ。大事なのは第一印象です。その点に関して、りゅーぞーじくんはコミュ力高いしお人好しだし正義感があるからうってつけの役である。面倒事はよろしく、りゅーぞーじくん。これが第二段階。
最後にフットインザドアである。向こうにあるのが敵対心や警戒心だったらドアインザフェイスの方が有効だろうが、今回は罪悪感だ。ズルズルいけばいくところまでいく。これでミッションコンプリート。
「い、いや、そこまでは言ってな――」
というおっさんのエクトプラズムはクラスメイトの歓声に掻き消される。お姫様はオロオロするばかり。チラッとこちらを見たような気がしたので愛想笑い――それもできるだけ申し訳なさそうな感じで――を浮かべておいた。
「とりあえずみんな落ち着いて」
そこで声を上げたのが四季先生だ。大人の対応である。
一歩前へ出て、おっさんに頭を下げる。
「子どもたちがすみません……ですがこの子の言う通り、私たちには当てがないのです……」
「いえ!いえいえ!こちらこそ頼みごとをする側だというのに無礼をはたらいて申し訳ない」
「私にできることがあったら何でも仰ってください、王様」
ごくり。唾を嚥下する音が聞こえた。このおっさんよもや四季先生に手を出そうなんて魂胆じゃあるまいな。
とまあ四季先生やりゅーぞーじくんの尽力もあってこちらはだいぶ落ち着いてきた。ここがどこで相手が誰で目的が何かは明確になったので、一旦流れに身を任せることにする。
「そこでだ。とりあえず君たちには身体能力や魔力の測定をしてもらいたい」
おっさんが言うには、この世界には身体能力や魔力――更にはパッシブスキルやアクティブスキルなどの戦闘能力がある程度形式化しているらしく、それを視覚化する技術があるのだとか。スカウターかよ。
いかにもな文官の人が一歩前へ出てくる。
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