月ノ雫学園

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「詳しいんだな。」 後ろを向くシルバに私は呟く。 『今、前を向いた方が身のためだよ。』 しかし、それは既に手遅れ。 イキシアの手によって飛ばされたチョークは彼の頭に激突。 「ーーーっ!?」 あまりの痛さに声にならない悲鳴を上げ、床でもがき苦しむシルバ。 ざまぁ。 壁にめり込んだぐらいだから、痛いのは確かだ。 「さて、授業を続けましょう」 異様な空気の中、無理やり始められた授業中。 終わりの鐘が鳴るまで彼は死んでいた。 「いただきます!」 午前が終わるとお昼ご飯。 購買でパンを買った私は先ほどの三人に捕まり、輪になって食事を始めた。 一方、イキシアの猛烈な攻撃をもろに受けたシルバは頭に大きな絆創膏を貼り、泣いていた。 「もう、男ならしっかりしなさいよ!」 「当たったことねぇから、そんな事いえんだよ! 痛てぇんだぞっ」 当たりに行く人なんていないと思う。 「はいはい、喧嘩しない!」 二人の間に入って、ネコラが止める。 私はパンを食べ、呼ばれているからとその場を離れた。 どうも、こういうのは慣れていないため離れたくなってしまう。 教室から出て、庭にあるベンチに座る。 一息付き、空を見上げた。 「どうでしょう?この環境は」 ふと聞きなれた声がした。 気づけば私の顔を覗き込むイキシアの姿が。 『今のところ、悪くないと思ってるよ。』 「それは喜ばしいことですね。」 イキシアとは私の母であった者と友達だったそうだ。 しかし、風の噂で子供だった私を置き両親とも海外へ行くと聞いた彼女は私を引き取った。 彼女は母だった者より、私自身と向き合ってくれる。 イキシアを母と呼んでもいいほどに。 母だった者は母と思っていない自分がここにいる。 否、自分の娘の前でそのような発言をしたのだからそうなのであろう。 ーー「貴女みたいな不気味な子、私の娘じゃないわ!」ーー 普通なら泣きわめいて、拒絶するかもしれない。 当時の私はそのことを知っていたかのように拒絶すらしなかった。 それを受け入れていた。 『今日のご飯、何がいい?』 「そうですね。オムライスが食べたいですね」 『了解』 今は家庭に幸せを感じているのだから、それでいいや。
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