【有り難い話】

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{1} ある老人が語る…。 お前さん…。 お前さんは見た所、ワシなんかよりずっとお若いが… それでも、これまでの人生で、いろんな物をなくし…その代わり、いろんな物を手に入れた事だって有ったじゃろう。 そう。 生きてりゃ、いろんな物をなくす…。 でも、その代わりにいろんな物が手に入る事も有る…。 例えば… 気ままな独身生活をなくした代わりに… バラ色の新婚生活が手に入る。 例えば… 愛する人をなくした代わりに… 莫大な保険金が手に入る…と、まあ、これは冗談じゃが。 実は… ワシも、ある大事なものをなくしてしまっての。 それは… まあ、見ての通り…『若さ』じゃよ。 おいおい。 笑わんでくれよ。 当たり前の話じゃが、 老いは誰にでもやって来る。 でもな。 若さは失ってしまうが、その時に頑張って生きてりゃ、安楽な老後を手に入れる事ができるというものじゃろ。 ワシは、この歳じゃが… 実は、まだまだ現役なんじゃ。 ワシの周りは皆、若いヤツばっかりでワシのような老いぼれは、誰一人としていやせん。 最初は、ワシも凄く不安じゃった。 こんなに歳が離れた若いヤツラと、これから上手くやっていけるのか…とな。 ところがじゃ! こんな老いぼれが、ワシ一人だけという事を知ると… 周りの若いヤツラは皆、ワシを尊敬して、同時に気遣かってくれるようになったんじゃよ。 時には、 「一緒に頑張りましょう!」「強く生きていきましょう!」とこんな老いぼれのワシに声をかけ、口々に励ましてくれる。 そん時、思ったよ。 「ああ、歳をとるのも悪くないもんだな。若さをなくしてしまった代わりに、周りの若いモン達からの暖かい気遣いを手に入れた…」とな…。 だから、お前さんも見た目が老いぼれだからと言って、ソイツを邪険に扱ったらイカンよ。 え? もちろん、そんな事しないじゃと?? ウソをつけ!! お前さん… 昨日… この老いぼれを… このワシを 邪険にしたじゃろうがぁぁぁっ!!!
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