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この手紙が読まれている頃には、
恐らく私は既にこの世にいないのであろう。
代表取締役。
私が15年前に呼ばれていた役名である。
当時は廊下で会う社員達がこぞって頭を下げてきた。
「おはようございます!」
「おはよう」
事務的な挨拶を毎日よく続けたものだ。
君達が苦い顔をしているのが目に浮かぶよ。
だけどごめんな、遺産などは全部君達に任せる、
代表取締役であった私が頭の上がらない君達に。
いつからだろう?...と考えてみたのだけれど、
もう結婚をしたときから
いや、付き合い始めた時から敵わなかった。
貴美子が産まれてからも、
「お父さんらしくしてよ!」
「遅くまで呑んでないで帰ってきなさい!」
とよく怒られた。
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