episode192 肩すかし

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episode192 肩すかし

「ああ――征司お兄様。ロンドンはいかが?」 その夜遅く 征司から電話がかかって来た。 「僕ですか?ええ――久しぶりに大学へ行ったら楽しいの。え?何が楽しいかですって?」 虫の知らせ というやつか。 「新しくいらした先生の授業を取ることに決めました。文芸学科の――違いますよ。僕は本なんか書かない。ただ興味があって」 僕がよからぬことをしようとしてると 告げ口したのは蝶か蜻蛉か? 「お兄様だってお好きでしょう?タイタスや青髭――え?青髭をご存じない?だったら余計に僕が習ってお教えしなくちゃ」 花瓶に活けられた薔薇の葉を ブチブチ千切りながら。 「ええ。戻ったら……約束ですよ。ベッドで読みますから」 どうにか――。 「うん。もちろん……裸でね」 どうにか誤魔化した。
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