episode192 肩すかし

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「先生は本をお書きに?」 「ああ、何冊か」 「実は僕も」 「書いてるの?」 僕は控えめに首を横に振る。 「構想はあるんです。でもどう書けばいいか分からなくて」 「へえ。聞かせてよ」 「構想をですか?」 唇を噛んで様子を探る。 カップを手にしたまま前のめり。 「それが……その」 「どうした?」 「ちょっと赤裸々なものなので――」 「ふうん」 「つまり僕の実体験を」 かすかに眉を上げ目を見開くと 先生の瞳孔が大きくなった。 「そんなに経験が豊富なの?」 完全に興味を惹いたのだ。
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