episode192 肩すかし

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その夜――。 「僕にはできません。彼を誘惑するなんて」 「何?どうした?天下の天宮和樹が」 部屋に帰ると僕は 依頼主である椎名涼介に慌てて電話を掛けた。 「今回ばかりは話が違います」 「それでもやってもらわなくちゃ困るよ。もう前払いで報酬をもらってんだ」 下卑た笑い。 昨夜のあれが前払いの報酬だったわけか。 「そんなこと知るもんですか!だって彼、九条さんの――」 「九条さんの……?何?」 さすがの錬金術師も 思いがけない名前に言葉を詰まらせる。 「元家庭教師で――ファーストキスの相手なの」
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