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その夜――。
「僕にはできません。彼を誘惑するなんて」
「何?どうした?天下の天宮和樹が」
部屋に帰ると僕は
依頼主である椎名涼介に慌てて電話を掛けた。
「今回ばかりは話が違います」
「それでもやってもらわなくちゃ困るよ。もう前払いで報酬をもらってんだ」
下卑た笑い。
昨夜のあれが前払いの報酬だったわけか。
「そんなこと知るもんですか!だって彼、九条さんの――」
「九条さんの……?何?」
さすがの錬金術師も
思いがけない名前に言葉を詰まらせる。
「元家庭教師で――ファーストキスの相手なの」
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