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「ああ、和樹くん」
姿はないのに声がした。
「どうぞ、入って」
デスクの前に屈みこんだまま
花村一路は僕を招き入れる。
「ちょっと待ってね……今」
探し物の途中か。
「どうぞお構いなく。これを置いたら帰りますから」
僕はわざと冷たく言い放つと
デスクの上に昨日借りたテキストを戻した。
「それじゃ」
早々に背を向けて
一歩
二歩
彼から離れる。
ある意味賭けだ。
「ダメダメ、君に見せたいものが」
三歩離れたところで
僕の背後――慌てて彼が立ち上がった。
「何ですか?」
僕の勝ちだ。
満面の笑みで振り向けばそこには――。
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