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(藤沢さん、最後に聞いてもらえますか?)
私に残された時間は、残り一分もない。
大発見を伝えたくて、早めに浮上を始めたから藤沢さんには時間が有るが。
(私ね、リターナブル何です)
隠語を伝えた瞬間、本日二度目の大きく息を飲む気配が伝わって来る。
そうだよね、そうなるよね。個人情報の保護の観点から、この事は誰にも知られない様に、特に厳重に護られているから。
自分から告げる人だってそうそう居ない。
私は一度死んで甦った人間ですと。
二十一世紀の終わりにも流行った終末思想と、一向に改善されない貧富の差から犯罪者が増え殺人が横行した。その傾向は今も続いている。
当然の如く、狙われるのは弱い者。
年端も行かない子供や女性、老人達。
幸か不幸か、医療技術の進歩も有ったから、死に至った人を甦らせる術も人は手にしていた。
唯一、倫理がその前に立ちはだかったけど。
……人はそれを感情に流し軽んじた。
罪もない人が亡くなり、罪人が生き残る歯痒さを払拭したくて。
加害者の更正よりも、被害者への救いを過剰に求めて。
進歩した医療技術がそれを可能にした。
火星へと人を運ぶ為の冷凍睡眠の技術と、臓器移植の為の免疫の問題を解決した技術の応用。
そして昔から有る、自分の細胞を初期化して新しい臓器等を作る方法からの応用。
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