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医師に真実を語られた時は、落ち着いたもので、やはりそうかと受け入れてはいた。
勿論それは形だけのもの。
だって前途有る若者の未来を閉ざさない為にと、多くの人が頑張って切り開いてくれた道なのだから……。
父や母が泣く姿をもう見たくなかったのも有る。
私の気持ちは考えなかったのとは、どうしても問えなかった。
自分だって生きていると安堵したし、何より多くの人が罪無き者の命が救われたと祝福してくれたのだから。
(今の身体は、私を殺した人の身体何です。大掛かりな整形手術に因って見た目は同じにして貰えましたけど)
テレパシーで語る私を、藤沢さんの光が照らし出してくれている。
そう、肉体が自分のものではないから、私は子供を作らないと決めたのだ。
産んだ所でそれは他人の子ではないか。それに本来産めやしない。
それでも私は望まれて生かされたから。
(前途が有るから生きるべきだと甦らせて欲しく無かったです。皆の善意が苦しかった。寧ろこの研究所で多くの女の子達に嫉妬されて、陰口叩かれている方が生きやすかったんですよ)
本心を吐露していた。
(だって何時か誰かが、殺してやりたいと考えてくれるかも知れないじゃないですか)
溢れて来た涙のせいで藤沢さんの姿がぼやける。
誰にも分け隔てなく接する事が出来る彼が好きだった。
けれど、他人の身体で彼を好きに成るなんて、到底出来やしなかった。
皆は理解してくれるだろうか?
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