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「ダイバー五人の中では矢崎にリーダーを担って貰う」
一瞬にして周囲が静まり返り、室内の空気が硬く冷たく変化した気がした。
私にも自分の表情が強張ったのが分かる。
「藤沢には、今回が初めての潜水になる海月(うみづき)のサポートを頼む。後輩の育成は必要な事だ。特に男女平等と言われながらも、この仕事は女性には狭き門だからな、力を入れてくれ」
前半の言葉には安堵の溜め息、後半には嫉妬と悪意の呟き。
「良いなあ、海月さん」
「でも彼女、子供作れない身体だから」
「骨抜き女」
「どうせ藤沢さんとは、くっ付けないわよ」
知っているから。貴女達が子供の産めない身体を利用して、私が次々と男を骨抜きにしている何て根も葉もない噂を流しているって。
この身体故に取れた資格。
深海ダイバー。
二十二世紀半ばのこの時代、特殊な潜水服と吐き出した呼気を完全再利用するボンベ、二種の薬剤に因り、人類は残された秘境と言える高圧下の深海へと単身でも降りられる手段を手にしていた。
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