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(少し早いがもう浮上しよう)
潜水して早々に黄金のスケーリーフットを手に入れていた私に文句は無い。
それに一秒でも早く、皆にこの新しい命を見せてあげたい。
誘われて浮上を始める最中、小さいが悪い予感のする響きが身体を走り抜けた。
背中側、背負っているボンベの方からの音。
……何かが壊れた。命にかかわるかも。
潜水服の中、嫌な汗が背筋を伝って這い降りて行く。
異変を感じ取ったか、藤沢さんのテレパシーの声も硬い。
(海月さん。また、トラブル?)
そう、またトラブルだ。
私の潜水には、新人にしても多いと言われる数のトラブルが発生している。
自分でも二重三重のチェックをし、更には藤沢さんにも他のチームメンバーにも頼んで機材のチェックを行っているのに。
皮肉なのか、潜る度に新種を見付ける強運の方が目立っていて、トラブルの発生率の異常を知る人は少ない現実が有るが。
(ボンベ? 見せて)
背後に藤沢さんが回り込もうとした時、二度目の異音が私へ伝わった。
……ああ、これは致命的なトラブルだ。
初回のトラブルでは恐怖に身がすくんだのに、慣れてしまったのか妙に冷めた判断をしていた。
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