5人が本棚に入れています
本棚に追加
異種格闘技大会当日……
「…………………てなことがあってよぉ……。まあ、あいつはどっちの夢も叶えることが出来ずに逝っちまったんだがな……」
蓮は頭を下げ両手を組んだまま、おっちゃんの話を黙って聞いていた。
矢部はおっちゃんの話の途中から、ジムに入ってから、晴都にお世話になりっぱなしだった頃の思い出が頭の中を駆け巡ってしまい、ずっと泣きじゃくっていた。
「俺はなあ……4年前のあの時からおめぇさんを見てきた……。おめぇさんが前みたく、ふらあっと逃げ出そうとしたり、あいつとふたりで思い描いていた夢を諦めようとしたら、いつでもおめぇさんの首根っこを引っ掴んで、おめぇさんが歩むべき正しい道に連れ戻せるようになあ……。だが、おめぇさんにはそんな必要全くなかったんだわ。人にあ~だこ~だ言われなくても、おめぇさんは自分の夢を諦めもせず、逃げ出すこともしなかった……」
蓮は顔をあげ、無表情のままおっちゃんの顔を見た。
「俺の両足がさ……逃げ出し方を忘れちまったみたいなんだよ……」
蓮のその言葉を聞き、先程まで真剣な顔で話をしていたおっちゃんは、フッと笑みを浮かべた。
「バーロー!逃げ出そうって気持ちあったんかよ!……まあ、冗談は置いといてだなぁ。とにかくおめぇさんは、自分の力でここまで来たわけだ。それでもまだ自分の実力を信じきれないんつうんならよぉ、おめぇさんを認めたあいつの言葉を信じろや!他の奴等がおめぇさんが勝てないと思っててもなぁ……あいつと俺は、おめぇさんがレオンの野郎を必ずぶっ倒すって信じてんだ!」
「僕も先輩が必ず勝つって信じてます!!!」
ずっと泣きじゃくっていた矢部が突然大声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!