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「おっちゃん……。矢部……。」
ふたりの名前を呟き、蓮はその場で大きく伸びをした。
「ちいとばかし、長く喋り過ぎたせいで喉がいてえわ……。こりゃあ、試合中にいつものように的確なアドバイスしてやれねえなあ。」
おっちゃんは矢部から飲み物を受け取り、口に含んでうがいをした後、ごくんとそのまま飲み込んだ。
「今までろくな指示もらったことねえよ!」
蓮はおっちゃんに向けて、笑顔で言い放った。
蓮とレオンの試合まであと少し……
選手控え室に漂っていた重苦しい空気は
きれいさっぱり消えていた。
3人が程よいモチベーションを保った状態のまま、控え室で待機していると、控え室の扉がノックされ、係の人が入ってきた。
「失礼します。織原 蓮さんの試合の開始時刻が近付いてきました。青コーナー側出入口に移動お願いします。」
蓮はスッと立ち上がり、そのままドアへと歩いていった。
「それじゃあ、晴都と俺の夢掴みに行ってくるかな……」
蓮は独り言のように呟いた。
「おめぇさんたちの夢って、一体なんなんでい?」
おっちゃんの問い掛けに、蓮は振り返った。
「そりゃあ、もちろん………」
蓮、おっちゃん、矢部はニカッと笑顔になった後、一斉に口を開いた。
「「「¥$¢£%#&*@§」」」
(3人とも全く違う言葉の為、何て言ったのかわからない)
「3人ともバラバラじゃねえか!!!」
そう言って、控え室を出ていく蓮の後ろ姿は、おっちゃんと矢部が今まで見てきた何倍も頼もしく見えた……
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