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「おめぇさんがそこまで弱音吐くたぁ、相当プレッシャー感じてんだな……まあとりあえず、黙って俺の話を聞きやがれ。」
おっちゃんは、蓮の目の前に丸椅子を置き、そこによっこらせっとと腰掛けた。
「俺はなぁ……おめぇさんと晴都、ふたりがジムでスパーリングしてるのを初めて見たとき、俺の頭のてっぺんから爪先まで雷に打たれたかのように、とんでもねえ衝撃が身体中を駆け巡ったぜ……まあ、雷に打たれたこたぁねえからよ。そこらへんはどうでもいいが……」
おっちゃんは咳をひとつして、話を続けた。
「とにかくだ……荒削りだが、もしかすると世界に名を轟かせるような事になる、物凄い逸材をいっぺんに俺はふたりもみつけたわけだ。それからしばらくして、ひとりは自分に厳しく、誰よりも強くなりたい一心で、俺が思っている以上の速さで成長していった……。かたや、もうひとりの方は、俺の前では努力している素振りも見せず、大事な時にこねぇわ、逃げ出すわで、俺の人を見る目もそれほどあてにはならねえなと、そん時思ったんだわ。」
おっちゃんは長く喋りすぎたのか、矢部が持っていたスポーツドリンクを引ったくると勢い良くそれを飲み干した。
「ウェップッ……どっちが誰の事を言ってっかは、おめぇさん自身わかってっだろうからそのまま話進めるぞ。そして4年前のある日、ふたりのうちのひとりが俺に話があるといってきたんだわ。」
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