あや・ふ・や

ニワトリの話

困ったな。僕は肩を竦めるしかない。
毎度毎度のことなのだけど、先輩の部屋は相変わらずのカオスだ。鍵すら掛かっちゃいない。

「先に行って片付けておいてくれ給え。私は食材を調達してくる」そう言われた時点で気がつくべきだったのだ。いつもながら、自分の迂闊さ加減に腹が立つ。くそ。挿し込んだままの鍵が間抜けた音でジャラつく。マスコットの黄色いクマさん。僕をあざ笑う赤チョッキ。

今どきスマートフォンどころか携帯電話すら持っていない。アパートの赤電話はちょいちょい機嫌を損ねて不通になる。たいていはコインが詰まったせい。じゃなきゃ、受話器が上がったまま。接触不良と管理問題。完全に現代人失格。いや設備としてもどーなの、コレ。