ニワトリの話

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積み上げられた本を棚に戻し、脱ぎ散らかされた衣服をロフト代わりのハンモックに放る。 ジーンズとTシャツ。下着は見ないフリ。どうせ普段は男物のトランクスだ。チャルメラとチキンラーメンのパッケージプリント。籐のバスケットが定位置。勝負パンツとか見たことない。ブラだけが生々しい装飾で、部屋の空気にそぐわない感じがする。やれやれ。見慣れた景色だけど、なんだか慣れちゃマズイ気もするぞ。とはいえ、このポジションを他人に譲りたくないってのも本音。 テレビもステレオもなし。ぐるりと本棚に囲まれた素っ気ない空間。真ん中に僕が拾ってきた卓袱台が猫みたいに円く蹲っている。天井にはハンモックが幾つも吊るされ、収納だったり寝床だったりに活用されているらしい。基本板敷き雑魚寝しか見たことないけど、その時にはツーリング用の寝袋が活躍する。マットや敷布もなし。 照明が遮られているせいで薄暗い。間接的な灯りはなんとない雰囲気を醸していて、いつも僕を落ち着かせる。残念ながらそういう空気になったことはない。ホント。残念ながら。
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