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あの誘いに少しでも魅力を感じてしまった俺は、実に軽薄だった。
単純、そう言われても仕方ないかもしれない。
いまさらどうこう悔やもうが、もう遅い。
「……話しをしに来たんじゃなかったのかよ?」
「もちろん、話しもしますよ」
だったらこの状況はなんなんだ。
あの後仕事に戻り、労働時間を終えて彼を自宅であるマンションに招き入れるまでは大人しかったのに。
俺の視界に映るのは見慣れた天井と未だ見慣れない美青年。
いつの間にか俺は辻に押し倒される格好になっていた。
「……お前、男を抱く趣味でもあるのか?」
「逆ですよ。男に抱かれる趣味です」
趣味って言うほど遊んでないですけど、と俺の上に馬乗りになった彼はにこりと微笑む。
(コイツ本当に男なのか?)
思わず疑いたくなるくらい軽く華奢な身体。
彼と触れ合っている部分から否応なしに熱が伝えられ、そこを意識すればするほど俺の鼓動は騒がしく波打った。
「……ねぇ、さっきの質問の答え聞かせてくださいよ。長瀬先輩を犯した時、先輩はどんな気分でした……?」
するり、と辻の細い指先が俺の首筋から胸元をなぞり、強請るかのように甘く言葉を囁く。
「興奮しました?」
耳殻を緩く食まれればぞく、と甘い痺れが背筋を這っていく。
「……っ、やめろ。てかどけよッ!」
俺は相手のペースに呑まれる前に辻の身体を引き剥がそうと彼の両肩を強く押し返した。
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