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第一印象は危なっかしい奴だなと思った。
二年になって初めて同じクラスになったそいつは一年の時からイジメられてたらしい。
高校生にもなってまだそんな下らない事をしてる奴もいるんだな、とイジメの被害者でも何でもない俺は完全に他人事で。
しかし、ある日偶然通り掛かってしまった。
「お前さ、ほんとダッセーよなァ!」
先公に隠れタバコを吸いに行く途中、嘲る様な品の無い声が耳に届きそちらを覗くと、人気のない校舎裏で黒髪の少年を数人の生徒が取り囲んでいた。
中心に居る少年──長瀬春輝は何も言わず俯いたまま微かに肩を震わせている。
明らかなイジメの現場だ。
やがて、リーダー格の少年の一撃を皮切りに小柄な細い身体へ嘲笑や怒声と共に次々と拳や蹴りが叩き込まれていく。
その度に白くか細い喉の奥から鈍い呻きが漏れた。
それまで倒れぬよう踏ん張っていた様子だったが、鳩尾に鋭く膝が叩き込まれ、その身体がゆっくりと地面へ崩れ落ちる。
その時、そいつと目が合った。
制服は所々破れ、土まみれになったボロ布の様な姿。
その目は暗くどこか諦めているようでもあり、救いを求めるかのように期待に揺れていた。
──たすけて。
俺はなんの気紛れか取り囲む集団へ歩み寄り声を掛けた。
突然の部外者に余程驚いたのか、俺を見るなり少年たちは我先にとその場から逃げ出す。
「なんだ、腰抜けばっかりじゃねーか」
つまらない、と鼻で笑いつつ残された長瀬に手を差し伸べる。
彼は驚いたように目を瞬かせていたが、おずおずと腕を伸ばし躊躇いがちに俺の手を取った。
「あ、ありがと……」
彼は安堵したのか力が抜けたように傷だらけの顔でふにゃりと微笑んだ。
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