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「…ところで」 水羊羹を冷やす間。 かちゃかちゃと茶器を鳴らすお隣さんに扇風機を向けながら、私は思い出したように声をあげた。 「横宮さん、あれからも行ってます? 焼き鳥屋さん。 えっと、向こうの」 「え? ああ、あそこか」 一度どうも、と言ってから、 横宮さんもまた思い出したように答える。 「行ってるよ。やっぱりあそこは美味しいからね。 僕が一番頼むのは砂肝だけど、他もいけるよ。 あ、それから──」 「おっと、手伝います」 お茶のお盆をぱっと取り上げ、 私は始まりかけた砂肝トークを中断した。 また、日を改めて聞きますね。 「…で、そのことがどうかした?」 「あ、そのう……」 トークの打ち切りを気にしない問いに、 今度は私が言葉に詰まる。 実を言えば、この人が何事もなかったようにそこへ通っていることはわかっていた。 あの後も私の部屋からは毎夜のごとくペンライトの明かりが見え、同じ場所で消えている。 夜風の窓辺に頬杖をついて、 いつも眺めているんだから。
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