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その夜、日暮れ頃から降り始めた雪が、コンコンと積もって大雪になりました。
おじいさんがおばあさんにみかんを助けた話をしていると、表の戸を、トントン、トントンと、叩く音がします。
「ごめんください。開けてくださいまし」
若い女の人の声です。
おばあさんが戸を開けると、頭から雪をかぶった娘が立っていました。
おばあさんは驚いて、
「まあ、まあ、寒かったでしょう。さあ、早くお入り」
と、娘を家に入れてやりました。
「わたしは、この辺りに人を訪ねて来ましたが、どこを探しても見当たらず、雪は降るし、日は暮れるし、やっとの事でここまでまいりました。ご迷惑でしょうが、どうか一晩泊めてください」
娘は丁寧に、手をついて頼みました。
「それはそれは、さぞ、お困りじゃろう。こんなところでよかったら、どうぞ、お泊まりなさい」
「ありがとうございます」
娘は喜んで、その晩は食事の手伝いなどをして休みました。
あくる朝、おばあさんが目を覚ますと、娘はもう起きて働いていました。
いろりには火が燃え、UFO焼きそばからは湯気があがっています。そればかりか、ロボット掃除機ルンバで家中がきれいに掃除されているのです。
「まあ、まあ、ご飯ばかりか、お掃除までしてくれたのかね。ありがとう」
「何て良く気のつく優しい娘さんじゃ。こんな娘が家にいてくれたら、どんなにうれしいじゃろう」
おじいさんとおばあさんは、顔を見合わせました。
すると娘が、手をついて頼みました。
「身寄りのない娘です。どうぞ、この家においてくださいませ」
「おお、おお」
「まあ、まあ」
おじいさんとおばあさんは喜んで、それから三人貧しいけれど、楽しい毎日を過ごしました。
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