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「おじいさん、おじいさんや」
おどろいたおばあさんは、おじいさんにこの事を話しました。
「―――♪」
収録が終わり、前よりもやせ細った娘が原盤かかえて出てきました。
「おじいさま、おばあさま。もう、隠していても仕方ありませんね。わたしは、いつか助けられたみかんでございます。ご恩をお返ししたいと思って娘になってまいりました。けれど、もうお別れでございます。」
そう言ったかと思うと、おじいさんとおばあさんが止めるのも聞かず、たちまち一個のみかんになり坂の向こうへ転がって行ってしまいました。
「みかんや。いや、娘や。どうかお前も、たっしゃでいておくれ。・・・今まで、ありがとう」
おじいさんとおばあさんは、いつまでもいつまでもみかんを見送りました。
それからのち、二人は娘の歌った印税で幸せに暮らしました。
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