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監督の姿もなく。これはキャプテンに一任されたもはや聖桜の伝統になっているみたいだ。
(ピピー)
ホイッスルが鳴り響く。
先に仕掛けたのは一年生チーム。一人が強引にデフェンスの壁をドリブル突破する。本郷剛だ。
(本郷)甘いぜ
本郷はペナルティーエリアの外から強引に左足を振り切った。ボールは一直線にゴール右隅に吸い込まれていった。先生は一年生チームだ。本郷以外の10人が喜び、駆け寄る。しかし、本郷は相手にせずこう言い放った。
(本郷)お前らは、余計な事するな攻撃は俺一人で十分だ。守備でもしてろ。
即席チームとはいえ、チームワークはバラバラ。不協和音が起き始めようとしていた。
(澤野)真渕、あの新入生やるな。
(真渕)ああ、さすがイギリス帰りってところだよ
(澤野)だがな一人でどうにかできるほど甘くねえよ。
前半が始まって5分ほどで先制された。上級生チームもすぐさま反撃に出る。本郷にはCB(センターバック)の副キャプテン澤野がマークに付く。強行突破を試みる本郷だが、澤野のフィジカルはそれ以上だ。
(本郷)こいつ、抜けねえ
一瞬、本郷の足元が乱れた。その隙をついて澤野はボールをクリアした。そのボールをキャプテン真渕が拾う。そして一気に逆サイドに展開する。流れの中で右サイドからクロスが上がり中央でFW(フォワード)とCBが競り合う。しかし、3年FW桐谷の跳躍力の前にヘディングを決められてしまった。これで同点とされると上級生チームの猛攻が始まる。ポジションもあいまいである1年生チームは選手間の距離が間延びし、ボールを持たれる時間が長くなっていった。拾ってもパスがつながらず、本郷も自分ひとりで突破しようとするもすべて跳ね返されてしまった。結局前半は1-3と上級生リードで折り返された。選手たちの士気はかなり下がっていた。
(一年生)流石先輩たちだ。隙が無い。
(真渕)良し、10分後に後半を行う選手交代は自由に行え。
(澤野)いいのか真渕、1年生をあのままにして
(真渕)いいんだよ。これぐらいで折れてるようじゃ夢はかなわないさ。
一年生側では本郷がイライラと八つ当たりしている。
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