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そんなある夜、みかん姫はおじいさんとおばあさんに、泣いているわけを話しました。
「お父さま、お母さま。実はわたくしは、人間の世界の者ではありません。わたくしは、芸能界の者です。今度の十五夜に事務所から迎えが来るので、わたくしは帰らなければなりません。それが悲しくて、泣いているのです」
「なんと! ・・・しかし大丈夫。みかん姫はわしらの大切な娘じゃ。必ず守ってやるから」
そこでおじいさんとおばあさんは帝にお願いをして、事務所から来る迎えを追い返す事にしたのです。
十五夜の夜、帝はみかん姫を守るために、二千人の軍勢を送りました。二千人の軍勢は地上に千人、みかん姫の屋敷の屋根に千人が並び、弓や槍をかまえて事務所から来る迎えを待ちました。
やがて月が明るさを増し、空がま昼の様に明るくなりました。
すると車に乗った事務所の迎えが、ゆっくりとゆっくりとかぐや姫の屋敷へとやってきたのです。
「姫を守れ! あの者たちを追い返すのだ!」
二千人の軍勢たちは弓や槍で事務所の迎えを追い返そうとしましたが、どうした事か軍勢の体が石の様に動かなくなってしまったのです。
中には力をふり絞って弓矢を放った者もいましたが、弓矢は車に近づくと大きくそれてしまいます。
事務所の迎えの車は屋敷でとまると、おじいさんにこう言いました。
「果実とりのおきなよ。姫を迎えに来ました。さあ、姫をお渡しなさい」
おじいさんとおばあさんは、みかん姫の手を力一杯にぎりしめましたが、でもその手から力がすーっと抜けてしまいました。みかん姫は静かに庭に出ると、いつの間にかマイクを持ってました。
「お父さま、お母さま、これでお別れでございます。これからはテレビを見るたびに、わたくしの事を思い出してください。そしてこれを、帝にお渡しください」
そう言ってみかん姫は、おじいさんとおばあさんに、キシリトール入りの歯磨き粉と手紙を渡しました。
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