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あちこちに見えるキズから、この人もまたすごくたくさんの深いキズを負っていたことはわかる。
だけど、いつか僕もこの人のように大きな絆創膏を貼って、包帯を巻いて、キズが治っていくのを笑って見ていられるようになる……、なんて、そんな未来は想像できない。
そう言って顔を俯かせた僕。
「そうだね、今はまだ想像できないよね」
そんな僕に再び優しい声色で言った。
「ボクもそう思ってた。キズなんて治りっこないって……、毎日痛いし、辛いし、悲しいし……、どんどん身体の中が壊れていって、身体の中に涙が溜まっていくのがわかった」
そうだ。
僕も今まさに同じ。
「痛いのはボクだけで、ボク一人で耐えなきゃいけないんだって思ってた」
同じ。
今の僕と全く同じだ。
「だけどね」
「えっ??」
「だけど、ボクを支えてくれる人はたくさんいたんだよ」
小さな絆創膏が数枚しかなかったはずなのに、気付いたら消毒液が増えていた。
大きな絆創膏が増えていた。
包帯が増えていた。
他にもたくさんの治療道具が増えていっていた。
それを見ていると、頑張ってキズを治さなくちゃって思えたんだよ。
ニッコリと優しい笑みでそう言った。
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