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今もまだキズはあちこちに増え続けている。
いつ増えるかわからないキズに、いつも怯えている。
毎日痛くて仕方がない。
毎日辛くて仕方がない。
それでも、何だかさっきよりずっと元気が出てきた。
「痛くても頑張って生きようと思って。君は一人じゃないから」
「うんっ……」
「それと、これ」
目の前に出されたのは小瓶に入った消毒液。
「キズだらけのボクを君が助けてくれたように、ボクも君に何かしたいと思ったんだけど、今はこれくらいしかできなくてごめんね」
「あっ……」
その言葉で思い出した。
五年前、キズだらけで座り込んでいた人を。
僕とその人はすごく離れたところにいたけど、あまりにも痛々しいその姿はよく見えていた。
だから僕は偽善でもいいからと、たくさんの治療道具を送った。
あのとき、あまりにキズだらけで、表情も冷たくて暗かった。
だからまさか同じ人だなんて気付きもしなかったんだ。
「ボク達以外にたくさんキズを負った人は他にもいる。心に負ったキズは今も消えはしないけど、それでも身体中のキズはほとんど治っている。だからボク達も、いつかまた前のように生きられるように前を向いて行くんだよ」
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