『全然そんな、たいそうなもんじゃねえんだけどな……』

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「…うちは? なんでテントなんだよ?」 長いことどう言おうか迷って、ようやくそれだけ言えたんだけど、彼は即否定してきた。 「だから。 迷惑かけてねえだろ。 関わんなよ」 「そういう訳にもいくかよ。 どんな事情か知らねえけど、家がねえんなら。 役所に行ってだな…「あぁあぁ、いらねえ。 俺が好きこのんでテント生活してんだ、放っといてくれ」 「ここらへん、たいした景色でもねえぞ? キャンプなら、もっといい場所…「あぁもう、うっせぇなあ…ここ私有地でもねえだろ? 野宿するのに、いちいち許可がいる訳でもねえだろ? つーか、俺これから食事だし…あっち行けよ、食いにくいだろうが」 …なんか、ものすごい邪険に言われてるんですけど。 というか、食いにくいとか言いながら、自分がいるのにカップラーメンすすりだすし。 見れば、地べたにカセット式のガスコンロが置かれ、その上には小さいやかんがのっていた。 「…いらねえかも、だけど。 これ、やるよ」 ビニール袋から、さっき買ったお茶とチョコレートを出した。 彼は、ちょっと驚いた顔で自分を見た。 「…小さい子が、寒さに震えてたら大変って思ってさ。 とりあえず見に来たんだけど…お前タフそうだし。 じゃ、オレ行くわ…風邪とかひくなよ。 じゃあな」 それだけ言って、後ろを向いて帰路につく…関わるなよって、いやいや関わる気ぃなんてないっての。 …そういや名前も聞かなかったな、なんて思ったが、彼は関わりたくない訳だから、聞いたところで素直に言う訳でもないだろう。 そうやってその日は帰って…で、次の日もその次の日も、またその次の日も、相変わらずテントは張られていた。 学校への往復の際、方向は逆なんだけど、足をのばして河川敷まで覗きに来ていた。 彼は、橋の下なんかで何をしているのか。 気にはなっていたけど、何もしなかった。 だけど4日め。 その日は一日中雨だった。 さすがにちょっと気になって、夕方の診察時間だというのに家の手伝いは置いといて、彼を見に行くことにした。←雨で患者さんが少なかったせいでもある
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