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自分、無理してここに入る義理、あるか?
いや、ないない、どう考えてもない。
…それなのに。
今度は義務感はない、むしろ好奇心だろう…それが勝ってしまった。
いや、懐中電灯を持参してたから、でもある。
真っ暗なら絶対入れっこなかった。
祠に一度手をあわせてから、洞穴の中へ足を踏み入れる…。
入ってすぐに、それは聞こえてきた。
洞穴だから、やたら反響して聞こえる。
『…~!
畜生、ぃってえぇぇ…!
…だ、誰、か…』
…好奇心が、即、義務感と入れ代わった。
「おぉい!
どこだよ、返事しろ!」
声をあげて走りだす。
しばらく探しまわってたら、彼はすぐにみつかった。
頭上ギリギリだった洞穴の天井が高くなり、例えるなら今まで1階しかなかったところに、狭い2階への入り口が現れた、てなところの前に。
左足をおさえて、うずくまっていた。
「もう!
こんなとこで、何やってんだよ?!」
「ち…また、おめえかよ…」
彼は、足をひねってしまったのか、動かすことが出来ないようだ。
体力も、だいぶ消耗してるらしい。
「いいから足出せ。
応急処置する」
言いながら彼の傍にしゃがみこむ。
彼は相当疲弊しているのだろう、おとなしく従った。
懐中電灯を離し、右手を彼の左足にかざす。
右腕にはめているブレスレットの蒼い石が光る…その光を右手全体に携えて、今度は彼の左足の患部に照射する。
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