『全然そんな、たいそうなもんじゃねえんだけどな……』

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彼の苦悶の表情がやわらぎ、それから彼は大きく息をはいた。 「…は~っ…すんげぇ力、だな」 「知ってるだろ、サファイ族は魔法が使えるって。 オレは、治癒の力を専門にしてる」 彼は、足が動くのを確認するやいなやむくっと起き上がり、自分を押しのけて外に飛び出して行く。 「な、なんだよ…?」 「馬鹿、来るな!」 彼は雨が振る外まで出ると、藪の中で、…まあ、なんだ、用をたしていた。 ちなみに手を上にかざしてたから、あれで手を洗ったことにしているっぽかった。 「はあ…あ、わり。 うん、めっさ助かった、すまねえ」 彼は再び自分の場所まで戻ってきて、今回は素直に礼を言った。 無言でウェットティッシュを渡してやると、 「いちいちうっせーなー…」 と言いつつも、彼はそれで手を拭った。 「わざわざ外まで行くんだな」 「…女の傍で用足せるほど、神経図太くねえやいっつか…白蛇様に、あれだ、申し訳ねえっつーか…」 あらら、意外に律儀だ。 「あ~…えらい目に遭ったぜ…あっこの壁登ってあの上ん方に行きたかったんだけどよ、途中で足滑らせて変な落ち方しちまったみてえで。 昼前、だったかな、それからずっと動けねえし。 ああ、てめえに貰ったチョコがあったから、腹の方はまだなんとかなってたけどよ…」 あぁあぁ、見た目、足相当腫れてたしな。 こいつ馬鹿だろ、と軽く溜め息をついて、持参してきたおにぎりとジップロックを出してやる。 「これやる、からさ。 名前教えろよ」 「ありがたく貰ってやるから、さっさと食わせろコンチクショウ、腹減ってんだよ!」 「名前は?」 「トドロキ…ロキでいいや」
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