5人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の苦悶の表情がやわらぎ、それから彼は大きく息をはいた。
「…は~っ…すんげぇ力、だな」
「知ってるだろ、サファイ族は魔法が使えるって。
オレは、治癒の力を専門にしてる」
彼は、足が動くのを確認するやいなやむくっと起き上がり、自分を押しのけて外に飛び出して行く。
「な、なんだよ…?」
「馬鹿、来るな!」
彼は雨が振る外まで出ると、藪の中で、…まあ、なんだ、用をたしていた。
ちなみに手を上にかざしてたから、あれで手を洗ったことにしているっぽかった。
「はあ…あ、わり。
うん、めっさ助かった、すまねえ」
彼は再び自分の場所まで戻ってきて、今回は素直に礼を言った。
無言でウェットティッシュを渡してやると、
「いちいちうっせーなー…」
と言いつつも、彼はそれで手を拭った。
「わざわざ外まで行くんだな」
「…女の傍で用足せるほど、神経図太くねえやいっつか…白蛇様に、あれだ、申し訳ねえっつーか…」
あらら、意外に律儀だ。
「あ~…えらい目に遭ったぜ…あっこの壁登ってあの上ん方に行きたかったんだけどよ、途中で足滑らせて変な落ち方しちまったみてえで。
昼前、だったかな、それからずっと動けねえし。
ああ、てめえに貰ったチョコがあったから、腹の方はまだなんとかなってたけどよ…」
あぁあぁ、見た目、足相当腫れてたしな。
こいつ馬鹿だろ、と軽く溜め息をついて、持参してきたおにぎりとジップロックを出してやる。
「これやる、からさ。
名前教えろよ」
「ありがたく貰ってやるから、さっさと食わせろコンチクショウ、腹減ってんだよ!」
「名前は?」
「トドロキ…ロキでいいや」
最初のコメントを投稿しよう!