『全然そんな、たいそうなもんじゃねえんだけどな……』

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ふう、と溜め息をつくと、ロキはテントに戻ると言いだした。 「渡すもん渡すから、ついて来い」 なんだろう、と思いながら彼について行くことにする。 二人して無言のまま歩き、やがてあの河川敷のテントに到着する。 「…やったのは親っさんだけどな、一応唆したっつか原因作ったのは俺だし。 小切手くらい切らあ…とりま100万、でいっかな。 全然足んないとは思うけど、あくまでやったのは親っさんだからな。 で、この後この件でゴチャゴチャうぜえのは堪忍してくれ」 …いやいや、おまえ、軽くぽーんと100万って…や、100万ぽーんと出せる奴が行き倒れなんかするなよ…。 ロキはテント内に置いてあった大きい鞄から、小切手を取り出してさらさらと書き自分に渡した。 「…何呆けた顔で見てんだよ、金に困ってる訳じゃねえ。 別に俺ぁ浮浪者やってるんじゃねえんだからな」 「なら、自分の体調管理くらい自分でちゃんとしろよ…」 「…は、耳がいてえな。 まあ、頭の片隅くらいには置いとかあ」 ロキはそう言って、ニッと笑った。 「…世話になったな。 もう来んなよ、お前の親っさん、ますます猛り狂うぜ?」 「……」 自分、何も言えなかったんだけど、彼はテントの入り口を閉めた。 「…ん、分かった…」 それだけ言って、帰路につく。 この時は、まさか親父がますます暴走するなんて…想像も出来なかった。
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