『全然そんな、たいそうなもんじゃねえんだけどな……』

14/18
前へ
/58ページ
次へ
*~*~* 爆発があったのは、午後1時半より少し前ってくらい。 で、只今午後7時…自分、見事に何も持たずして、再びロキのテントを訪れていた。 「…いるんだろ? ロキ…」 ややあってから、テントの入り口が開く。 「んだよ? 来るなって言った…」 彼の言葉は途中で止まった。 自分が、あまりにもひどい顔をしていたからだ。 「…どうした」 彼の言葉を聞いて、涙腺の堰が切れて決壊する。 「えぇ?! お、おい、ま、待てって…」 「…っ、あ、あんな、親父…もう、知らね…!」 泣くつもりなんてなかったんだけど、泣いてしまった。 それくらい、親父がやったことは許せなかった。 ……診療所は、とにかく一時休業せざるをえなくなった。 うなだれる親父を支えて自宅に戻った。 母さんは、ひっきりなしにかかる電話の応対に忙しなかった。 親父にロキからの小切手を渡すと、あのクソ親父は『ふざけんな、あの野郎!』とビリッビリに破いてしまった←正直、これでロキに金銭面で負担かけないですむ、とホッとした そして、すごい顔で睨まれた。 今まで親父から、こんな顔で見られたことはなかった…初めて自分の親を怖い、と思った。 そのなんともいえない親父の顔を見て体がすくんでしまって、まさか親父が自分に手刀を振り下ろしてくる、なんて思いもしなかったし…動けなかった。 急に自分の目の前が暗転して…起きたら居間のソファで布団をかけられて寝ていた。 外はもう、薄暗くなってきている…びっくりして起きたら、すぐ傍に親父がいた。 そして、こう言った。 『お前の力を封印した。 これ以上、あの力を使うな…ロクなことにならねえ』 瞬間、寒気がした。 自分の力は、自分が自分である証明…一種のアイデンティティって奴であって。 それを自分の許可なく、一方的に封印するなんて。 いつものように念じてみたけど、やはりブレスレットの蒼い石は光らなかったし、何より自分の体内からわきあがるいつもの力がない。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加