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『なんってことしやがんだ、このクソ親父!
戻せよ!』
『やかましい。
大体お前に治癒能力だなんて、10年20年はええんだよ。
まだ育ってないのに、能力だけが強すぎる…』
『今の今まで普通に使いこなしてましたけど?!
親だからって横暴なんだよ、訴えてやっからな!』
『は、誰に向かってでかい口叩いてんだかな!
ここら辺一帯で、一番権力がある人ってだ~れだ?』
『…最っ低…!!』
『お前は今までどおり、学校行って家の手伝いして。
おとなしくしてりゃ、それでいいんだ。
余計なことに、首突っ込むんじゃねえ』
『…もう、知らね…!
ふざけんな、このクソ親父!!
こんな家、もう絶対戻らねえ!!』
泣きそうになったから居間から飛び出して、勢いで家を出る。
あてもなく走って走って、…やがて振り向くけど、クソ親父も母さんも追いかけては来なかった。
……ホッとしたような、虚しいような。
自分のことなんて、どうだっていいんだ、いらないんだ。
足は勝手に、あの河川敷に向く。
…いくらクソといえ、コランダモ四大名家を背負う親父が。
いくら何かしらの粗相があったからって、あそこまでロキにキレたのには何か訳がある、と思ったのだ。
「…で、俺に、どうしろと?」
「だから。
ロキ、親父に何か言ったんだろ。
それを知りたい」
「…ってもよぉ。
親っさんは、お前になんも言わなかったんだろ。
ってことは親っさんはお前に、それを知られたくねえんじゃねえか?
なら、俺の口から言う訳にいかねえってもんじゃね?」
「…意外に論理派…」
「人にはプライバシーってモンがあるんだし。
とりあえず、てめーんちの親子喧嘩に俺を巻き込むなよ」
「…お前さあ。
名家の御令嬢が、路頭に迷ってんだ。
まーさーか、無視なんて、しないよな?」
「…金ならやるから、関わんなよ」
「金なんていらねえから、関わらせろよ」
「…お前、馬鹿だろ…」
「は、おまえ程じゃねえ」
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