『全然そんな、たいそうなもんじゃねえんだけどな……』

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やがて旅を続けるにあたって、ぽつぽつとだけど話してくれた。 彼は『紅玉の涙』というルビ族に伝わるお宝を探しているんだ、ということ。 幻と言われているそれを手に入れた時、願いごとが叶えられるんだそうだ。 そして、ロキがお金に困っている訳ではない理由…どうやら彼のお祖父さんが、昔に何やらしていたらしい。 彼も詳しいことは知らないそうだが、お祖父さんのそのなんらかの功績により、彼の口座には洒落にならない金額が入っているようだ。←さすがに見せてはくれなかったけど 「遙か昔、この世界を創った神様は…争ってばっかいやがる両族に愛想つかしたのかどうか知らねえけど。 大洪水を起こしてさ。 全部綺麗さっぱり、流しちまおうってしたらしいんだ。 両族ともたくさん死んだらしい…で、その後なんだ、『紅玉の涙』の伝説が浮上したのは。 大洪水…『怒れる神の聖なる鉄槌』の前はな、魔法を使えるルビ族もいたし、すんげー身体能力を持ったサファイ族だっていた。 だから、魔法だかなんだかのそんな凄い力のルビ族の秘宝があったって、全然不思議じゃねえ。 大洪水、がキーワードってならさ、やっぱ蛇とか竜とかの言い伝えが残るとこは怪しいんじゃねえかなって。 ましてや白蛇っつったら、目は赤いだろ…」 過去に水が氾濫したさまは、蛇や竜になぞらえて伝説として残っている、という話は耳にしたことがある。 彼は、そんなところに目星をつけて、各地をまわっているらしい。 「……」 『紅玉の涙』について語る彼はどこか熱っぽくて、何か力が漲っているというか、やたら一生懸命というか…ちょっと素敵だ、と思ったのは彼には絶対内緒だ。
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