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「な、なあ今日の数学の課題なんだった? 俺寝てて覚えてなくてさ…」
今更自己紹介するのもなんか気が引ける。考えに考えた末、別に寝てないし課題なんてもう終わってるけどこれしか俺には話題がなかった。
スーツグラサン…長いからグラサンでいいや。グラサンはいかにもビジネスマンが持ちそうな黒い鞄から似合わない数学の教科書を出した。
「29ページの問題とプリントだったぞ。あれ? お前寝てたっけ…?」
「あ! ああ、ありがとう! 助かったよ! ところで部活とか入ってないの? 放課後暇?」
「入っているといえば帰宅部だ。放課後は帰宅せねばなるまい。」
「お、おう…。家どの辺? 一緒に帰ろうよ。」
「学校から徒歩2分だ。一緒に帰る必要もなかろう。」
さっきからなんだこのしゃべり方…。他では普通に話してると思ったけど…。
「じゃ、じゃあ家に遊びに行っていいかな?」
唐突すぎる? やっぱりまずは休み時間から仲良くすべきだったかな…。でも行くしかない! それに家族の顔を見れば素顔も予測つくし実態も掴めてくるんじゃないかな!? 一石二鳥? 俺冴えてる? 断られれば意味ないけど! お願い!!
にこやかな顔をしてるつもりだが、冷や汗がすごく出てくる。ドキドキしながら返事を待った。
「ふむ…。何にもないがそれでも良いならば来られたし。」
よっしゃああああ! まずは第一歩! 相変わらず変なしゃべり方だけど!! もはやしゃべり方なんてどうでもいい!
俺は心踊らせていた。待ち受ける未来も知らずに…。
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