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「…雪路、漢字とかは書けるか?」
雪路は小さく頷く。
「それは誰に?」
「……母さんだ。」
「教えてもらってる時は楽しかったか?」
「………知らない事を…覚えるのは…楽しかった…」
その時の雪路の顔…表情は変わってないが声色が何処か嬉しそうだった。
って、感じた俺の感性間違っていないでくれ。
きっとその嬉しさは母親と一緒にそういった時間を過ごせたのが嬉しかったんだろうな…。
「学校っていうのはな、そういう楽しいのを沢山学べる場所だ。
友達って言う大事な存在も出来るし、先輩や後輩、色んな繋がりが増える。
お前が…分からないと思っているものの答えが分かる場所だ。」
微かに見開かれたその綺麗な目はたった一人俺を捉える。そう、俺達兄弟は特殊過ぎて何もかもが普通とは違う。それを俺は知ってる。
「………っ…」
「ヤクザの家が学校に通ってもいいのかって?どうせ、自分の片親がヤクザの組長でしたーなんてついこないだ知ったんだろ?
何も気にすることねーよ。
俺等だって普通に中学行って高校行ってんだから。それなりに友達居るんだぜ?」
「………大丈夫なのか…?」
「花桐組は…まあデカイっちゃデカイ家だけど、他の極道とは違うから。
そんな抗争ばっかしてないし、平和そのものだって。…ただウチは怒らすとヤバイってだけ。
オーケーおちびちゃん?」
お。いま少しムッてしたな。ほんの少しだけど。おちびに反応したか?
「……でも…俺はお前達にとって…邪魔じゃないのか…?」
「何言ってんだ。
お前と俺達は家族だろーが。」
『母さんと雪路は家族だからね…』
その時、雪路の脳裏に何が浮かんだかは分からない。でも、ずっと抑えてたものがあったんだろう。まだ14歳だ。
何がきっかけになったのか、雪路が俺に抱き付いて声を上げて泣いたのだ。
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