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翌朝、学校へ向かう僕の足は、心持ち軽かった気がする。
教室で、廊下で、校庭で、僕はきみの姿を目で追った。
でもそんな僕にきみは、まるで気付いていないようだった。
放課後、僕のいつもの場所に、きみは現れなかった。
普段と同じ、孤独な空間。
いつものように太い幹に背中を預け、いつものように本を広げる。
昨日落としたページには、うっすらと、擦れたような跡が付いていた。
なんのことはない、いつも通りだ。
昨日が特別だっただけで、そうそう特別が続くわけはない。
今日はひとりだからと言って、昨日きみがいた事実が変わるわけでもない。
ページに付いた跡を指で撫でながら、僕は心の中で、自分に言い聞かせるように何度も、何度も繰り返した。
昨日きみが座っていた僕のとなりには、きみが落としたハンカチだけが静かに座っていたけれど、きみが僕を見付ける前より、孤独になったような気がした。
分厚い灰色の雲から、ぽたり、ぽたりと雨粒が降りてき始めた。
昨日のあの真っ青な空と鮮やかな夕焼けを想いながら、重たい足を引きずるように家路へ着いた。
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