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手に入れたいと願って努力して手に入れる。俺は周りから天才と呼ばれていたがそうではない。あくまで俺は泥臭い秀才で、彼女こそが本当の天才。
憧れて、引き付けられ続けている白と黒の世界の住民、それが彼女。白臣 蛍(しらおみ けい)。白にも黒になりきれない灰色の俺とは違い、白と黒で出来たような彼女は俺がもがいても手に入れなかったものを持つ、天才だった。
俺が煩わしいと思いながらも手放さなかった色んなしがらみも、彼女はいらないと簡単に捨て去ってしまう。誰にどう思われてもいい。他には何もいらない。ただ自分の才能だけで生きている。
それはとても傲慢で、だけど誰もが憧れる生き方で。彼女は彼女の興味があるものばかりを手元に揃え、大多数の人間が手放すのをためらうような世間体や社交性、下手したら人との繋がりすらも、囲碁に関係なければいらないと言って捨てていたのかもしれない。
『生きにくそう』
確かにそうかもしれない。誰もが彼女のように生きられるわけでもない。だけど誰もが憧れる生き方を生きる彼女はとても純粋で、そしてとても危うい存在でもあった。
囲碁以外何も知らない無垢な彼女。
言葉の持つ怖さを知らず、そのままを受け入れる。
他者の視線の意味を知らず、煩わしいとしか思わない。
なんて無知で、危ういんだろう。その純真な全てを手に入れたら、どう染められるんだろう。
彼女を知れば知る程、興味が抑えきれなくなっていくのと同時に、遅れてやってきた異性としての劣情に、最初は受け入れる事を大いに躊躇った。
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