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「君と同じ年の子の卒業アルバムは何百冊もコピーを取ってあるよ。でも君を見つけられなかったのは…君の苗字が雪子の旧姓じゃなかったからなんだ。」
そう言えばあの母親は何度も男を替えていた。
その度に自分の苗字が変わったのは覚えている。
「戸籍を調べたり…もっとちゃんと調べればよかったじゃん。」
「調べたさ。だが、雪子は私が殴ったことを理由に警察へ行き…住民票や戸籍を閲覧出来ない措置をしたんだ。それから色んな方法で君達を必死に探したけど…手掛かりはなくてね…。雪子のご両親も亡くなっていたし、妹のマチさん夫婦とも連絡が取れなくて本当に苦しんだよ。」
それでも探し方は普通じゃないし、秘密デートクラブで探すなんてどうかしてる。
思い出しただけでも本当に気持ち悪い。
「昨年末に癌が見つかってね…。もう手の付けようがない状態だとわかった時に、リカに遺せる物をちゃんと渡したいと思ってね。大した物ではないけど…もう、それ位しか私に出来る事はないから…。とにかくすぐにリカを見つけなければと焦ったよ。」
最後に会った時より頬は痩せこけて、白髪交じりの髪の毛を掻き上げる父。
「そんな時に川辺くんをね…たまたま東京で見かけて後をつけたんだ。そして会社名から現在どこに住んでいるのかを突き止めて、自宅に電話をしたんだ。」
「……」
「驚いたよ。まさか雪子がリカに虐待をしていて川辺家に引き取られていたなんて…。私のせいで、長い間辛い思いをさせたのかと思うと…どう償っていいのか…」
「今更そんなこと言われても…」
「すまない、リカ。君の人生を変えたのは私だ。本当なら何不自由ない生活をさせてあげられたのに…私のせいで幼い頃から辛い思いを…」
咳き込む父の背中に触れた。
優しく撫でると涙声で言った。
「本当にすまない…リカ。許してくれとは言わない…ただ…またリカに会えて私は今幸せだ。あの時…君が私の娘だと気づいていたら…今はもっと幸せだったと思う。運命のいたずらとは良く言ったものだ。あの日、東京で再会した日の事を覚えているかい?」
「……」
忘れもしない…思い出すと本当に腹立たしくて…
自分が悪いことはわかっていても、カイを傷つける必要はなかったはずだ。
父の背中から手を離しぎゅっと拳を握りしめた。
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