混沌

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「私はあの日のことを一生忘れないよ。彼が…知らなくてもいいことで傷つけられた、貴方に傷つけられたんだよ!」 「すまない、リカ。」 「絶対に許さない!私を探せなかったことより、カイを傷つけたことの方が許せない!」 握りしめた私の手を両手で包む父。 「でも…私が言った事は本当のことだろう?彼に会う為に金が欲しくて、君は見ず知らずの男から金を受け取った。」 「それが悪い事だとは思ってる!私がバカだったって事も良くわかってるよ。でも…カイのせいじゃない…カイは…悪くない!」 「いいかい、リカ。男の為に自分を安く売るんじゃない。男は自分に惚れてる女を上手に利用するんだ。特にバンドなんてやってる男は…」 「いい加減にして!!カイのこと何も知らないのに…本当に貴方は最低です!」 父の手を払い立ち上がる。 「もう話したくありません!帰ります!」 「リカっ…待って…」 ドサリと音がして振り返るとベッドから落ちて私に手を伸ばす父。 「リカ…悪かった…、すまない…リカ…」 歯をくいしばり父を抱き起こす。 「どんなに謝られても…カイの傷は…」 涙が出た。 「リカは…優しいんだな…相手のことをそんなに思いやれるなんて…」 「優しいんじゃないよ…人を傷つけたくないだけ。」 父は柔らかく微笑むと私の頭に触れた。 「ずっと…こうしたかった。小学校、中学校、高校の時のリカに会いたかった。」 「……」 「いろんな相談に乗ったり、甘えられたり…喧嘩したり…したかったよ…」 「お…父さん…」 「…時間が…もっとあれば…もっと沢山のことを教えて…あげられたのに…」 「懐石料理…美味しかった…ね。」 「ああ、また連れて行ってあげたい…」 「連れて行ってよ!また、元気になって…連れて行ってよ!」 「…リカ…」
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