羨望のIF

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深い霧の中にいた。なぜそこにいるのかは分からず、何をしたいのかも思い出せ無い。なんとなくだが、その記憶を白く塗り固められた様な感覚が朝のまどろみに似ていて (あぁ、これは夢なんだな) オイラはそう思った。しばらく歩くと聞きなれない音が耳を魅了した。そこでオイラは一人の男が見慣れない楽器を手に座っいるのを見つけた。彼が弦を弾く度に風が、木々が、光までが表情を変える様に感じた。男は立ち止まったオイラに気付くとニコリと微笑み、そして言った。 「一曲聞いていくかい?」 オイラはうなづいた。 「ーーー勉強もろくに出来なくて、泣いてばかりのガキでしたーーー」 「……」 熱い想いをそのまま放つ様な声と音が辺りを埋め尽くし、まるで炎の中にいる様に伝わってきた熱にほだされたのか、気付けばオイラは泣いていた。そして、あっという間だった一曲を聞き終わると同時に拍手が聞こえた。気付けばすぐ隣に一人の男がいた。オイラと背丈の変わらないところから見て年齢は12.3だろう。黒で統一された服と仮面で分かりにくいが恐らく男性だ。彼もまた音楽を聞き入っていた様で彼は拍手を終えるとオイラに気付き、少し考えるそぶりを見せた後に言った。 「いい歌だった。まるで自分のことの様に聞こえたよ……君はどうだい?」 「え……あー、そうだな。自分の黒歴史を聞いてるみたいで耳が痛いくらいに?」 それを聞いて彼はクスリと笑い言った。 「君は僕より後悔が少ない様だ。きっといい道をにいるんじゃないかな」 その言葉の意味が分からずオイラが応えに困っていると再び霧が濃くなり始める。どうやらこの不思議な夢から覚めてしまうらしい。 「あぁ、オイラも良い道にいると思う」 消えゆく景色の中にオイラはそう叫んだ。 image=499563948.jpg
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