心の不協和音

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その時、私は自分の人生が終わったかのように感じさせられた。  全ては薄い暗闇で、時計もなく、時間さえも分からない。食事を出す朝 昼晩の三回しか看護師は現れない。様子を見に巡回しているのかもしれないが私には全く見当がつかない。  私は、自分の人生そのものに、先が、未来が、希望が現れないのではなかろうかと落胆した。時間はやたら長くて、何時間経ったのかと思っても、私には時計を見せてもらう権利がなかった。  日数が経つにつれて、何とかしてここから出してもらおうと思うのだが、それには辛抱強く黙っていることであった。  鉄格子で囲まれた、その部屋の薄い闇の中へ、私は吸い込まれてしまい、それは私自身の生き抜く力の最後の最後まで浸食していった。事実、部屋は真っ暗で大きい鉄の扉によって出入口は閉ざされており、むき出しの便器がポツンと隅に置いてあるだけだ。  床に直に布団が敷かれ、唯一、化学繊維でできている暖かい毛布だけが、私を可哀相に思ってくれている別の病院の勤務医の叔父からの手配で来たものではないかと思っていた。そして優しい叔父に改めて感謝していたが、それは私の勘違いでしかなく、それらはもともと病院にあったものだった。  ここは、そう、保護室と呼ばれる精神科病院の入院中に過ごす部屋である。症状が安定していない患者や、または意志が他の患者から隔離して治療に臨んだほうが良いと思う患者の、寂しく、辛い、残酷とも思える行き場である。  こんな辛い思いを十七歳でするとは思わなかった。
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