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「皆様、風船はいきわたっていますでしょうか。それでは、私が合図致しますので風船を空へあげてくださいませ。3、2、1、はい!」
司会者のかけ声とともに私は渡された風船から手を放す。
赤、青、黄、白、ピンク、緑、オレンジ。
様々な色が青空へと旅立ち、散らばってゆく。けれど、どの風船もやがては一つ残らず萎んで地面に墜ちていくのだ。新郎新婦の門出を祝うイベントとしてはどうなんだろうと思う。
ま、どうでもいいけど。
「披露宴会場はあちらになります」
風船を飛ばしおわると、式場スタッフの案内で皆ぞろぞろと歩き出した。新緑の風と陽射しが心地よい。
洋館風の結婚式場はまあまあ洒落ていて、そこそこきらびやかで、見栄っ張りな洋子の趣味に合ったのだろう。そんなことを思いながら、私はあたりを見まわす。大学時代の友人は一人も来ていない。ああ、やっぱりね。
洋子の結婚式なんかに来るわけないか。誰も洋子のことを友達だなんて思ってないだろうし。
でも、残念。今日は面白いことが起こるかもしれないのに……。
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