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「はいスト~ップ!」
「うわっ!急に降りんなや!」
駅まではまだ少し距離がある緩やかな坂を登りきった所で、蒼井さんが荷台からピョンと飛び降りて危うく自転車ごとコケそうになる。
「マジ腹減った~!ここのラーメンめちゃめちゃ美味いよ?食べてく?奢ってやるよ」
っとに…何なんだよ?
停まった場所は、古ぼけたラーメン屋の前で…
「食べてく」
だけどとにかく腹も減って死にそうだったし、俺がそう答えると嬉しそうに笑って
蒼井さんはその、いつも素通りしてたちっちゃなラーメン屋に入って行った。
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「ここ何でも美味いから…何がいい?塩?醤油?
俺のお薦めはねぇ…
ネギラーメンにネギトッピング!」
「ネギラーメンにネギトッピ…初めて聞いたわ(笑)」
「何で?超美味いよ?あとね、餃子も」
「俺普通に醤油でいいよ…」
「餃子は?」
「いらない…」
「なんだよ?奢ってやるっつってんだから遠慮すんなよ!」
「遠慮はしてませんけど…」
「おじさん、俺いつものと、この子は醤油…あと餃子二枚!」
店主『あいよー』
いやいや、聞いてましたよね?
いらないって言ってんのに、餃子二枚頼むし。
強引なヤツだなー…
でもま、いっか…
奢ってくれるって言ってるし。
独特な中華屋の匂いがするその店も、まともに喋った事もないのに妙に馴れ馴れしいこの人も
心の中にすっと入ってきて、でもそれは全く嫌じゃなくて
むしろどっか懐かしいような…そんな感覚だったんだ。
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