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「つーか前から思ってたんだけど、何で俺の名前知ってんの?」
「ん?名前?…教えてもらったじゃん」
「俺教えた覚えないよ?いつ?」
「さぁ…それは教えらんないなぁ…」
しらばっくれてまた窓の外を見る。
「何なんだよ、一体…」
あの時が初めて、じゃなかったの?
「じゃあね、明日朝練付き合ってくれたら教えてあげるよ」
「朝練?」
「うひゃひゃ!7時に駅ね」
「は?し、7時…」
「ほら着いた、お前降りんだろ?」
「は?あぁ…」
気付けばもう既に俺が降りる駅のホームに電車が入っていて
停車して開いたドアからピョンと飛び降りると、電車の中から蒼井さんが
「明日7時だぞ!気を付けて帰れよー!」って呑気に手振ってる。
目立つしハズいし…いや待て?何で降りる駅まで知ってんだ?
「あ、ねぇ!7時とかマジで無理だよ!」
閉まるドアに訴えてはみたものの、俺の声は発車のアナウンスに掻き消され
聞こえないふりでニコニコ手を振る蒼井さんを乗せて、無情にもその電車は走り出した。
「はぁ…マジで何なの?あの人…」
溜め息を吐きながら、走り去った電車に背中を向けてホームをトボトボ歩く。
「7時とか?ぜってー無理だから!あー足、痛ってぇ!」
太股を軽く叩きながら階段を下り改札を出る。
「ふはっ…しっかしネギすごかったな…」
家に帰る途中の商店街を歩きながら、ふとあの人の笑った顔が過ぎる。
気が付くと思い出し笑いしてる自分がいて
そんな自分が可笑しくてまた、笑ってた。
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